古古古米はまずい?3年越しの米に“旨さ”を取り戻す調理術と味の活かし方

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古古古米を「食べる」という選択肢

冷蔵庫の奥から忘れられたお米が出てきたときの、あの気まずさ。では、それが3年前に収穫された米だとしたらどうだろう。そう、古古古米。読んで字のごとく、“古”を三つ重ねたこのお米は、いわば時の洗礼を受けた食材である。

しかし、味わいのピークを過ぎたからといって、即座に「まずい」と決めつけるのは早計だ。フランス料理における熟成肉や、和食におけるへしこ、なれずしに通じるような「時間をどう料理するか」という発想が、ここにはある。

この記事では、古古古米の食味の特徴、調理のコツ、そして用途の再設計にまで踏み込んで、“あえて選ぶ”価値を見出していきたい。

古古古米とは何か?その背景と食味の現在地

古古古米は「経年米」の最終段階

古古古米とは、収穫から3年以上が経過した米を指す俗称である。流通の中で「新米」「古米」「古古米」と年を重ね、ついにたどり着くのがこの“古古古米”というカテゴリーだ。

これは政府の備蓄米などで多く見られ、災害備蓄や市場調整用に長期保管されていた米が、一定のサイクルで放出される際に登場する。

価格は手頃だ。5kgで2000円前後という設定は、物価が上がり続ける中で非常に魅力的である。しかし、それと引き換えに、風味や粘りといった米の美点はどうしても薄れてくる。

時が削る「甘み」「香り」「ふくよかさ」

米は生鮮食品である。時間が経てば、でんぷんは劣化し、脂質は酸化する。水分が抜け、粒の芯が硬くなる。炊き上がりの香りには、あのふくよかな蒸気の甘さが失われ、かわりに僅かな酸味や乾いた印象が立ち上がる。

つまり、古古古米における「まずさ」とは、我々の記憶の中にある“理想の白飯像”との乖離に他ならない。

古古古米を美味しく炊く。最小限で最大限を引き出す

冷水でゆっくり吸水させる

もっとも重要なのは「水」。乾ききった古古古米の粒に、しっかりと潤いを戻すことができなければ、炊き上がりは硬くて不満が残る。おすすめは冷蔵庫で4〜6時間。冷水でじっくり吸わせると、中心部まで水分が浸透し、粒に柔らかさと粘りが戻る。

昆布と酒でうま味のレイヤーを足す

香りの乏しさ、味の軽さを補うために、調味は静かに、しかし的確に加えるのがよい。米2合に対して昆布5cm角、日本酒大さじ1を加えて炊飯。これだけで、炊き上がりの香りに丸みが出る。必要であれば、だし汁を炊飯水の代わりに使ってもよい。

ブレンドという選択肢

新米7割に古古古米3割。この配合で炊けば、新米の粘りと香りが支えとなり、古古古米の存在が程よく隠れる。炊飯器の「熟成炊き」や「古米モード」があれば迷わず使いたい。

古古古米を活かす“リメイク料理”

チャーハン:粒立ちの良さを逆手に取る

古古古米は粘りが少ない分、パラパラとした炒飯にうってつけだ。中華鍋で高火力で炒めれば、粒が踊り、香ばしさが立ち上る。卵やネギ、干し海老のような強い旨味と合わせれば、むしろ新米よりも扱いやすい。

雑炊:出汁の力で包み込む

だしを主役にした雑炊は、素材の味が弱い古古古米にとって、最高の舞台である。いりこ、昆布、かつお節、あご出汁など、和のエッセンスとともに炊けば、米の存在感は控えめでも、食事全体としての完成度は高まる。

梅干し、塩昆布、柚子胡椒といったアクセントで香りを支えるのもおすすめだ。

米粉:味を捨て、構造を活かす

食味の限界を感じたならば、潔く米粉にしてしまうのもひとつの手。ブレンダーで粉砕すれば、団子やクッキー、天ぷら衣といった多用途素材に変身する。むしろクセの少なさが、汎用性の高さに転じる。

古古古米は「味わいを育てる米」である

一膳のご飯に「とびきりの旨味」を求めるなら、古古古米は遠回りかもしれない。しかし、手間をかけて調味し、調理し、設計することに面白さを見出せる人にとって、これは“育てる米”である。

そのままでは足りない。しかし、それをどう補い、どう昇華するか。これは、味覚と対話する楽しみを与えてくれる素材だ。

物価高の時代にあって、コストを抑えつつ食卓にもうひとつの可能性を加える。古古古米は「安い代用品」ではなく、「知恵と手間で再構成される食材」なのである。

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