
群馬県藤岡市の片隅に、地元民のみならず県外からも多くのファンを集める洋食屋がある。その名は「鶴商文庫(つるしょうぶんこ)」。一見すると古書店のようなその外観に、足を止めてしまう人も多いかもしれない。だが扉を開けたその先には、昭和の香りをまとった異世界が広がっている。壁を埋め尽くす漫画本の棚、木製のテーブル、懐かしいインテリア。そして何より、想像を超える“デカ盛り”の料理が待ち受けているのだ。
肉の楽園:圧巻のハンバーグワールド
鶴商文庫の代名詞ともいえるのが、ハンバーグを中心とした肉料理の数々だ。ふっくらと仕上げられた300g級のハンバーグは、ナイフを入れた瞬間に肉汁が滲み出る。単なる大きさだけでなく、粗挽きの肉が持つ力強い旨みと、手作りならではのふくよかな風味が一体となって、噛むごとに幸福感が増していく。
とりわけ「ミックスグリル」は、初訪問者が頼むべき一皿だろう。ハンバーグを主軸に、チキンソテー、ロース、厚切りベーコンなどが所狭しと盛られており、その堂々たる姿は、まさに“肉の祭典”。この一皿で、鶴商文庫の真髄を存分に体感できるはずだ。
“文庫”の名に込められた、もう一つの味わい
「鶴商文庫」という名は、単なるネーミングではない。店内には約3,500冊にも及ぶ漫画や書籍が並び、待ち時間や食後にゆったりと楽しむことができる。「文庫」の名の通り、この店は「食」と「本」が共存する文化的空間でもあるのだ。
昭和・平成初期の懐かしい漫画が中心で、かつて子どもだった大人たちが青春を回顧するにはうってつけ。こうした空間づくりもまた、鶴商文庫が多くのリピーターを生む理由のひとつだろう。
愛され続ける理由と、店主のこだわり
一度は閉店の危機にも直面したが、地域の声と支援を受けて見事に復活を遂げた鶴商文庫。その背景には、料理に妥協しない店主の信念と、地元に根ざした姿勢がある。
仕入れから仕込みまで全て手作業で行うスタイルは、大量生産では到底再現できない“店の味”を守り続けている。ときには提供までに時間がかかることもあるが、それすらもこの店における“待つ楽しみ”として、客たちは黙して受け入れているように見える。
鶴商文庫を味わう旅へ
藤岡という町は、華やかな観光地とは言えないかもしれない。しかし、こうした“味”と“文化”が静かに根づく土地には、確かに旅の価値がある。
鶴商文庫の暖簾をくぐれば、そこにはボリュームだけでは語り尽くせない、食と物語の深みがある。ひとくちごとに心が解け、満腹以上の充実が胃の底からじんわりと湧き上がってくるだろう。
店舗情報
店名:鶴商文庫
住所:群馬県藤岡市本郷832-1
営業時間:11:00~13:00(売り切れ次第終了)
定休日:木曜・日曜・祝日
アクセス:JR八高線「群馬藤岡駅」から約2.5km(バスまたはタクシー利用が便利)
駐車場:店舗前に10台程度あり
訪問時のアドバイス
・開店前から並ぶ人がいるため、10時半前の到着が理想的
・ライスは「小」でも約450gと多め。初来訪者には「ミニライス」がおすすめ
・一皿をシェアするのもOK。量に自信がない人は無理せず楽しもう
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