
鳥もつ煮とは?山梨県が誇るご当地グルメ
山梨県の郷土料理「鳥もつ煮」は、鶏の内臓(レバー・ハツ・砂肝・キンカンなど)を砂糖と醤油で甘辛く炒り煮した料理です。一見すると地味ながら、地元民には「家庭の味」「蕎麦のお供」として親しまれてきた歴史ある一皿です。
特に甲府市では、蕎麦屋の定番サイドメニューとして根強い人気を誇り、観光客よりも地元民が日常的に楽しむ“通好み”のグルメでもあります。
鳥もつ煮の発祥と歴史|甲府の蕎麦店から始まった物語

戦後の食糧難が生んだ料理
鳥もつ煮のルーツは、戦後間もない昭和25年頃、甲府市の蕎麦店「奥藤本店」が精肉業者から仕入れた鶏の内臓を無駄なく活用しようと工夫したことに始まります。
肉よりも安価で栄養価の高い内臓を、甘辛いタレで照りが出るまで炒り煮するという手法は、当時の庶民の食生活に合った実用的なレシピでした。
B級グルメとしての躍進
2009年からは「甲府鳥もつ煮」としてB級グルメイベント「B-1グランプリ」に参加。翌年にはゴールドグランプリを受賞し、全国的にその名が知られるようになりました。
しかし、単なる話題先行のご当地グルメではなく、長年にわたり地域の食卓を支えてきた“実直な郷土料理”であることは忘れてはなりません。
鳥もつ煮に使われる部位の特徴|キンカンの美学

キンカンとは?
鳥もつ煮に欠かせない具材のひとつが「キンカン」と呼ばれる未成熟の卵黄部分。これは鶏の体内でまだ殻を持たない卵であり、いわば“生まれる前の命”ともいえる存在です。
キンカンは煮込むことでネットリとした濃厚な食感を持ち、甘辛いタレとの相性も抜群。一般の飲食店ではなかなかお目にかかれない希少部位で、鳥もつ煮を語る上では欠かせない要素です。
レバー・ハツ・砂肝との絶妙なバランス
鳥もつ煮は、レバーのほろ苦さ、ハツのコリコリ感、砂肝の歯ごたえなど、異なる内臓の個性が一体となった料理です。それぞれの食感と風味が、甘辛いタレに包まれることで一皿に調和を生み出します。
家庭でも作れる?鳥もつ煮のレシピとコツ

必要な材料と基本の作り方
材料(2人前の目安)
- 鶏レバー・ハツ・砂肝・キンカン 合計300g
- 醤油:大さじ3
- 砂糖:大さじ2
- みりん:大さじ1
- 酒:大さじ1
作り方のポイント
- 臓物は丁寧に下処理し、臭みを抜く。
- 強火で炒め、水を加えず“炒り煮”にするのが特徴。
- 照りが出てくるまで根気よく煮詰める。
ポイントは「煮る」のではなく、「水分を飛ばしながら炒める」こと。これにより、味が凝縮され、艶やかな鳥もつ煮が完成します。
臭みを消す工夫も忘れずに
レバー特有の臭みを抑えるためには、牛乳に漬けてから調理するのも効果的。キンカンは崩れやすいので最後に加えると良いでしょう。
山梨県内で鳥もつ煮を食べるなら?おすすめ店舗紹介
甲府市内の老舗蕎麦店や定食屋では、鳥もつ煮を提供している店が点在しています。以下は地元民に人気の店です(記事公開時点の情報です)。
- 奥藤本店(甲府駅前本店):発祥の店であり、王道の味を体験できる。
- そば処 小作:ほうとうと並んで鳥もつ煮も評判。
- 支那そば 金魚:ラーメンと一緒に鳥もつ煮を楽しめる穴場的存在。
観光ガイドに載っていないような町の食堂でも提供されていることが多く、地元の人に「鳥もつやってますか?」と聞いてみるのもひとつの手です。
まとめ|鳥もつ煮は“臓物文化”の縮図である
「鳥もつ煮」は、単なるB級グルメにとどまらず、日本人の“もったいない精神”と内臓食文化の粋が詰まった料理です。
山梨を訪れる際には、ぜひこの甘辛く煮詰められた一皿に箸を伸ばしてみてください。それは、地域の記憶に触れる旅の一瞬であり、食の本質に立ち返る体験でもあります。
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